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名古屋高等裁判所 昭和56年(ネ)101号 判決

(昭和五六年(ネ)第一〇一号事件控訴人・

昭和五六年(ネ)第一四六号事件被控訴人(原告)

(昭和五六年(ネ)第一〇一号事件被控訴人・

吉村晴子

昭和五六年(ネ)第一四六号事件控訴人(被告)

浅川晴子こと金相女

主文

一  第一〇一号事件につき、

原判決中第一審原告敗訴の部分を次のとおり変更する。

第一審被告は第一審原告に対し金四三万五七五五円の支払をせよ。

第一審原告のその余の請求を棄却する。

二  第一四六号事件につき、

本件控訴を棄却する。

三  両事件につき

訴訟費用は、第一、二審を通じてこれを一〇分し、その二を第一審原告の、その余を第一審被告の各負担とする。

事実

第一審原告は、第一〇一号事件につき「原判決中第一審原告敗訴の部分を次のとおり変更する。第一審被告は第一審原告に対し金四三万六六二一円及びうち金七四〇円に対する昭和五四年一二月六日から支払済まで年五分の割合による金員の支払をせよ。」との判決及び仮執行の宣言を、第一四六号事件については主文第二項と同旨の判決を求め、第一審被告は、第一〇一号事件については控訴棄却の判決を、第一四六号事件については「原判決中第一審被告敗訴の部分を取消す。第一審原告の請求を棄却する。」との判決を求めた。

当事者双方の主張及び証拠の関係は、次のとおり付加するほか、原判決事実摘示と同一であるから、これを引用する。

第一審原告は次のとおり主張した。

一  第一審原告は、事故発生につき被害者近藤藤美にも過失があり、且つその割合を二割とみることに異議はない。そこで、第一審被告の負担すべき損害賠償額は、原判決判示の損害金合計四九五万〇九三九円に第一審被告の過失割合八割を乗じた金三九六万〇七四〇円となる。しかるに原判決は、特段の理由を示さず右内金七四〇円の請求を棄却した。

二  右損害金三九六万〇七四〇円については、うち車両損害金については訴状送達の翌日より、うち療養支給及び給与支給分については原判決添付の別表支払日欄記載の各翌日よりそれぞれ遅延損害金が発生するものであり、右各起算日より訴状送達日たる昭和五四年一二月五日までの遅延損害金は、本判決別表(金額欄は、右車両損害金及び原判決添付別表各金額の八割相当額(円未満切捨て)。年月日欄については、同表記載日の各翌日より起算に従い計算すれば、合計金四三万五八八一円となる。しかるに、原判決は右各遅延損害金の発生日を一率に訴状送達日の翌日とし、右金員の請求を棄却した。

三  よつて、右一、二の合計金四三万六六二一円と内金七四〇円に対する訴状送達の翌日たる昭和五四年一二月六日から支払済まで年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

(証拠関係)〔略〕

理由

一  当裁判所の請求原因及び過失相殺に関する認定・判断は、次項に述べる遅延損害金に関する点を除き、原判決理由説示と同一であるから、これを引用する(但し、原判決八枚目表終りより二行目末尾の「右折」を「左折」と訂正する。)。

なお、第一審原告は、過失相殺の結果第一審被告の過失割合を八割として計算すると損害賠償元本額は三九六万〇七四〇円となるとして、内金七四〇円及びその遅延損害金を請求するか、原判決は、算術的正確性に重点をおいて「八割」としているのではなく、従つて表現も「約八割」としているのであつて、当裁判所も、本件の事実関係につき、これを過失相殺制度の基本理念たる衡平の原則からみると、その過失割合を約八割とし、万未満の数字はこれを切捨てるのが相当であると考える。よつて、原判決には毫も不当の点はなく、右主張は採用の限りでない。

二  そこで、第一審原告の遅延損害金に関する主張について考えるに、第一審原告の損害賠償元本額は金三九六万円となるところ、その遅延損害金の起算日については、本件の如くその内容が甚だ多岐にわたる場合には、原判決の如くこれを一定の時点に統一することは運用上当をえた措置というべきであるが、しかし第一審原告があくまで各損害ごとの起算日を主張する以上これを認めるの外なく、従つて、第一審原告は、本件損害のうち、車両損害金については事故発生の翌日より、又療養補償及び給与支給分については各てん補の翌日よりそれぞれ遅延損害金を求めうるものといわざるを得ない。そして、右各遅延損害金に対応する各元金は、車両損害金については金四万八三九〇円の、その余については原判決添付別表てん補金額の各約八割に相当する額となるところ、前記元本総額を算出する際切捨てた七四〇円との関係上、まず右車両損害元金の八割相当額より右七四〇円を控除した三万七九七二円を車両損害分の元金とし、その余の損害の元金についてはそれぞれ右てん補金額の各八割相当額(第一審原告主張の額)とし、右各元金につき前記各起算日より昭和五四年一二月五日までの年五分の割合による計算(円未満切捨)をすると、それは合計金四三万五七五五円となる。

三  以上の次第で、第一審原告の本訴請求は、金三九六万円及びこれに対する、前項損害金及び右金三九六万円に対する昭和五四年一二月六日より支払済まで年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で正当として認容し、その余は失当として棄却すべきである。

よつて、原判決は、そのうち右金四三万五七五五円の請求を棄却した部分は失当でその余は相当であるから、第一〇一号事件控訴は右の限度で理由があり原判決を主文第一項のとおり変更し、第一四六号事件控訴は全部理由がないのでこれを棄却することとし、民訴法九六条、九二条を適用して、主文のとおり判決する。

なお本判決主文第一項二段目については、仮執行の宣言は相当でないので、これを付さない。

(裁判官 小谷卓男 浅野達男 寺本栄一)

別表

〈省略〉

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